東京短信(1) 2015/10/15

 

舎利容器 中国・伝スバシ 木製布貼彩色 6~7世紀 大谷探検隊将来品、東京国立博物館

 唐時代の宮廷の亀茲楽(きじがく)の有様を描いている。

 

 どうしても東京に出なければならない用事があって、というのもパスポートの更新手続きなのですが、ついでに東京国立博物館に行ってきました。驚くべきことに70歳以上の年寄りは入場無料となっていて、入口の係員に免許証を見せるだけで入ることができました。

 

 私のめざしていた場所は右側の東洋館で、この建物は2013年に改築完了していたのですが、いままで入っていなかったのです。

 展示品は中国の仏像、ガンダーラの仏像、西域の壁画などで、さすが日本一の博物館だけあって素晴らしいコレクションでした。

 

中国の仏像

 入ってすぐの一階では 2015年4月7日(火)~2016年4月10日(日)の期間、中国の仏像が展示されています。中国の仏像については、私のホームページ「金箔と仏像」のなかの「仏教伝来とその後の仏教の伝播状況」というページで取り纏めてありますのでご参照願います。

中国の仏像の初め ならびに 金銅仏の出現


菩薩五尊像 中国 大理石 北斉時代・6世紀、東京国立博物館

 仏教美術が中国で開花した北斉時代(隋・唐時代の直前)の半跏思惟像です。聖徳太子の頃の作品です。台座に駒犬が彫刻されているから、ガンダーラの仏像と一線を画しています。実に美しい優美な像です。

 

菩薩立像 北斉時代・天保3年(552) 根津嘉一郎氏寄贈、東京国立博物館

 実物をご覧になればわかりますが、神々しい威厳をたたえた名品です。

 注:北斉とは中国南北朝時代に高氏によって建てられた国。北斉時代(550年 - 577年)、

隋(581年 - 618年)、唐(618年 - 690年,705年 - 907年)

 

 

ガンダーラの仏像

仏鉢供養・菩薩交脚像 アフガニスタン 片岩 3~4世紀 矢野鶴子氏寄贈

 中央の鉢は釈尊が四天王から各一つずつ受け取って重ねたもの。口縁の刻線は重ねた様子を表現しています。左右の脚を交叉させて坐す菩薩は弥勒菩薩。釈尊の鉢は後継者である弥勒菩薩が思惟を続ける兜率天(とそつてん)に至ったといわれます。ガンダーラには仏鉢があったと法顕や玄奘が記しています。

 

仏伝「初転法輪」 パキスタン・ガンダーラ クシャーン朝・2~3世紀、東京国立博物館

転法輪とは真理を説くこと、すなわち説教のことです。「初転法輪」ですからお釈迦様が鹿野苑で説教を開始されたことをあらわしています。三つの車輪を載せた台座そのものがお釈迦様を体現しているのです。

 

如来坐像 パキスタン・ガンダーラ 片岩 クシャーン朝・2~3世紀

(館内説明) : 頭の後ろの円形は後光の表現で、神聖で偉大な神や人物の背後に表わされます。円形中向かって右にインドラ(帝釈天)、左にブラフマー(梵天)とみられる古来信仰を集めたインドの神が、釈尊に礼拝する姿を浮き彫りしています。釈尊がもっとも優れていることを意味するのでしょう。

土台部分の拡大写真。偉大な釈迦を拝む民衆の姿です。真ん中の人は頭上に荷物を載せた行商人でしょうか?

 

 私は実は大学在学中、京都国立博物館の会員になっており、博物館が主宰する講演会や小旅行に参加させてもらっていたので、仏像のことについては無闇矢鱈に詳しいのです。最近になってのことですが、パキスタンやインドの博物館、大英博物館、パリのギメ東洋美術館、メトロポリタン、フリーア美術館など古代仏像を蒐集した有名な美術館はすべて歩いて廻っています。

 ですから、ただで東京国立博物館の仏像が見られることは、晴天の霹靂、ラッキーでした。

 

夾紵大鑑

 珍しいことに現在閉鎖中の大倉集古館からの寄託品である大型漆器・夾紵大鑑(きょうちょたいかん)が陳列されていました。

画像:重要美術品 夾紵大鑑 伝中国河南省輝県出土 戦国時代・前5~前3世紀 東京・大倉集古館蔵

直径 138cm、高さ 50cm

 

遠くからの遠景

 大倉集古館より寄託された中国古代の貴重な大型漆器・夾紵大鑑(きょうちょたいかん)だそうです。撮影禁止になっていましたので、遠方から撮影しました。その大きさがわかります。中国の漆器はあまり残っていないし、時代も古く、世界でこれただ一点ではないでしょうか? 昔、メトロポリタンで乾漆の仏像を鑑賞したことがありますが、時代は下がるものの、乾漆の中国製仏像としてはきわめて珍しいのです。

2009/03/12撮影

仏陀座像 唐王朝(西暦618-906年)650年頃 河北省正定の大仏寺より招来
乾漆、鍍金と塗料の痕跡 メトロポリタン美術館 

 

 2時間半見て歩いて疲れ果てたので、東洋館の隣にあるホテルオークラレストランゆりの木でステーキを食べました。たったの¥3000。

 安くてとても美味だったので、都会にいる人達はこういう特典に囲まれて暮らしているのだなあ、と感じてまことに羨ましく思いました。

 

 では皆様ご機嫌よう。