平山郁夫シルクロード美術館

2015/10/30

 

 K博士、Y先生からいろいろ情報を頂き、ノーベル賞受賞者大村智さんが山梨県韮崎市に造った大村美術館を調べに行ったのですが、ここは貧相で美術鑑賞に適した場所ではありませんでした。

 

 代わりに北杜市に大層立派な平山郁夫シルクロード美術館を見つけました。

 

 

 本日10月30日からこの平山郁夫シルクロード美術館でガンダーラ展がはじまりました。通常展示されているシルクロードの絵画、ガンダーラ仏像のほかに、美術館が所蔵するガンダーラ彫刻が数多く展覧されています。

 

今回は、仏塔の胴部や基壇を荘厳(しょうごん)するのに用いられた仏伝彫刻のいくつかを見物することにしましょう。解説は館内説明板のままです。

 

 こういう彫刻を鑑賞し、説明板を読み通すと、当時のガンダーラの人達の仏教への傾倒ぶりが窺われて興趣が尽きません。

 

誕生

 パキスタン

 2-3世紀

 灰色片岩

 高28. 0×幅32. 0cm

 

ルンビニー園で沙羅双樹の一枝をとるマーヤー妃の右脇から太子が誕生する。マーヤーの姿は豊穣の樹精・ヤクシーのポーズを借りている。太子を両手で受けているのはインドの神々の王・インドラ(帝釈天)であり、太子がインドラを優る至高の存在であることがわかる。右端で合掌しているのはブラフマン神(梵天)、マーヤーの左腋を支えるのは妹(後の継母)のマハープラジャーパティー、そして彼らを取り囲むのは神々と天人たちである。

注:ヤクシーについてはシャーラバンジカーを参照乞う。

 

婚礼

パキスタン

2-3世紀

灰色片岩

高19. 8×幅34. 7cm

 

 頭光をつけた太子と、丈の長い婚礼衣装をまとうヤショーダラーが手を取りあう。本作は、聖なる火の周りを巡る婚礼の場面であり、取り仕切る祭司・バラモンの姿もうかがえる。インドでは現代においても火を巡る結婚儀礼が行われている。

 

降魔成道(ごうまじょうどう)

パキスタン

2-3世紀

灰色片岩

高10.5×幅39. 0cm

 

 場面はボードガヤ(インド)の菩提樹の下、悟りを開かんとするシッダールタ太子を囲む軍勢は、魔衆(マーラ)であり、成道を阻止しようと襲ってくる。太子の右にいて思案する人物は彼の攻略を思い悩む魔王。太子は「過去の多<の生涯にて身を犠牲にしたからこそ、仏陀の位にのぼることができる」と魔衆に言い、その証人として大地の女神を呼び出す。女神の証言により魔衆に勝利し、悟りを開いて仏陀となった。太子の右手は地天を呼び出す触地印(しよくちいん)をとり、この印相で魔衆を降ろしたことから「降魔印」とも言われる。台座前に倒れた魔衆たちは敗北を表している。死を象徴する魔衆に勝利することで、すべての生けるものを救う仏陀となる。

 

 帰りに星野リゾート・リゾナーレ八ヶ岳で食事しようか、と立ち寄ったのですが、まだ朝の11時でレストランは開いていませんでした。ホテルはハロウィンの装飾で賑やかでした。

 

 

 では皆様ご機嫌よう。

 

P.S.

 この機会に、平山シルクロード美術館に収蔵されている仏伝浮き彫りを中心として、東京国立博物館などによる収蔵品を加え、仏伝浮彫を纏めておきましょう。異教徒は仏伝にあまり関心がないことから、仏伝浮彫のコレクションの大部分は日本に集中していると考えられます。したがって、これらが纏って仏伝としては世界に誇るべきコレクションとなっているのです。

 

平山郁夫シルクロード美術館・仏伝の完全版